こどもの喘息診療
呼吸器内科は肺がん、間質性肺炎、感染性肺炎、喘息など悪性新生物から感染症、自己免疫疾患、アレルギー疾患など多岐に渡って診療を行いますが、その中でも私は喘息を中心としたアレルギー疾患を専門にしています。
喘息専門医の1人であるものの、今までは大人の喘息しか診ていませんでした。
しかし、開業してから子供の喘息を診る機会ができました。
喘息の吸入薬
喘息の吸入薬にはドライパウダー製剤(DPIともいい、粉末状の薬を吸い込むタイプの吸入器)とエアゾール製剤(pMDIともいい、ガスの圧力で薬を噴射するタイプの吸入器)があります。
喘息治療の主体は吸入薬ですが、ちゃんと吸入して届くべきところに薬が届かないと意味がありません。
実際に「他院で喘息の治療をしているのに良くならない」という主訴で受診する患者さんの何割かは、上手く吸入できていないだけです。
処方薬を変えずに、吸入指導するだけで症状が改善する方も結構います。
吸入時のベストな舌の位置「ホー吸入」 Ver.3 (jasweb.or.jp)
高齢の方や子供は上手くドライパウダー製剤を吸入が出来ない事が多々あるため、エアゾール製剤を選択し、時にスペーサーを利用する必要があります。
小児の場合や喘息発作時にはネブライザーで薬液吸入を行うこともあります。
ネブライザーは呼吸の同期が必要なく、確実に吸入できることがメリットですが、ネブライザーの初期購入費や管理維持費がかかり、時間と手間がかかるといったことがデメリットとして挙げられます。
スペーサーとは
スペーサーはエアゾール製剤を使用した際に、薬の噴射と薬を吸い込むタイミングを合わせる事が難しい患者さんが確実に吸入するための補助器具です。
薬の吸入方法|小児ぜん息基礎知識|独立行政法人環境再生保全機構 (erca.go.jp)
スペーサーは薬と違って処方が出来ないため、別途購入して頂く必要があります(1,000~3,500円)。
今回のブログを書くために調べるまで知らなかったのですが、6歳未満では喘息治療管理料2(280点)にスペーサー費用が含めて処方できるようになったみたいです。
色々な色やイラストが描かれたものがあるため、実際に使う子供に選んでもらうと気に入って使い続けてくれるという話を小児科の先生から良く聴きます。
2歳以下はマスク付きのスペーサー、3歳から5歳はマウスピースタイプのスペーサーを使用する事が多いです。
フルプッシュ、プッシュサポーター
エアゾール製剤を使う際に力が弱かったり、指が痛くて押せない患者さんがいます。十分に力をかけて押す事ができない場合に、テコの原理で弱い力でも押しやすくする補助器具があります。
フルティフォームの場合はフルプッシュという器具であり、他社ではプッシュサポーターなどといった名称です。フルプッシュは処方箋にコメントを書いておけば薬局でもらうことができますが、基本的には何も書かないと薬と一緒に渡されることはありません。
今までは大人の喘息しか診ていなかったため、へバーデン結節(指の第一関節に痛みや腫れ、関節拘縮を起こす病気)やバネ指(指を曲げる腱の炎症により、指が曲がったままになってしまう病気)などで指に力が入らない患者さんに対してしか、この器具を勧めていませんでした。
6歳未満では呼吸の同調が難しいことからエアゾール製剤を使う場合にはスペーサーを使うことが推奨されています。
しかし、今週下記の4コマ漫画に描いたように、未就学の小さな子供の場合でもフルプッシュを利用することで上手に呼吸を同調して吸入できることを学びました。
体感的には呼気一酸化窒素濃度を測定できるくらい医師の指示に従うことができるかどうか?というのが一つの目安になると感じました。
小児科診療を学ぶ機会
本当は小児の診療を学ぶために小児科の先生の外来を見学に行きたいと思い続けています。
しかし、クリニック休診日である木曜日には順天堂大学の外来を行っており、結果として日曜日以外に休みがないために学びに行く機会を作る事が出来ませんでした。
嬉しい事に3月16~17日(土・日)に開催される「第10回アレルギー講習会」で16日の17:10~18:40に開催されるイブニングシンポジウム2「アレルギー疾患における特異抗体検査の活用法~小児から成人まで~」に講師として講演する機会を頂きました。
座長は大阪はびきの医療センター小児科の亀田誠先生であり、前半の小児領域を東京慈恵医科大学葛飾医療センター小児科の堀向健太先生(ほむほむ先生)、後半の成人領域を私が講演する予定です。
滅多にないチャンスなので、これを機に小児科の堀向先生から小児のアレルギー診療について教えてもらおうと密かに企んでいます。