仮性アレルゲン (4コマあり)
アレルギー初学者向けの本として「ねころんで読めるアレルギー」を2025年に出版しました。
救急科、内科、小児科、耳鼻科、眼科、皮膚科、アレルギー科などに関わるアレルギー疾患について比較的幅広く記載したつもりですが、加えておけばよかったなぁと思う項目があります。
それは「仮性アレルゲン」です。
私は代議員をしていたころに日本アレルギー学会からの依頼を受けて医師向けに「食事後に症状をきたすアレルギー疾患の鑑別」に関するe-learningや専門医試験を作っていました。
そのe-learningで「鑑別の際には仮性アレルゲンに留意する必要がある」という注意点について以下のスライドを用いて解説していました。
日本アレルギー学会のe-learningから抜粋(院長作)👇
正確には仮性アレルゲンとアレルギーは一線を画すという理由で「ねころんで読めるアレルギー」の原稿に入れなかったことが悔やまれたため、今回は「仮性アレルゲン」について記載しました。
仮性アレルゲンとは
食物の中にはアレルギーを起こす物質を含んでいて、アレルギー様の症状を起こしてしまうものがあります。食べることでアレルギー様の症状を起こしてしまうセロトニン、サリチル酸、ヒスタミン、アセチルコリン、チラミン、トリメチールアミンオキサイドなどの物質を仮性アレルゲンと呼びます。
セロトニン
パイナップル、キウイフルーツ、バナナ、トマト、アボカド、プラムなどに含まれます。
セロトニンは神経伝達物質のひとつです。
人体内には約10mg存在し、90%が消化管粘膜に存在します。消化管のセロトニンが過剰に分泌されると下痢になります。脳内にも2%存在し、生体リズムなどの調整に関予しています。
生体リズム調整に関与するため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はうつ病の治療薬として用いられています。
消化器症状にも関与するため、セロトニン(5-HT)受容体拮抗薬は抗がん剤治療による吐き気を抑える治療薬として用いられています。
2型自然リンパ球(ILC2)に作用してアレルギー反応を起こすといったことが近年解明されてきました。
サリチル酸
パイナップル、ブドウ、メロン、オレンジ、トマト、キュウリ、ジャガイモ、イチゴなどに含まれます。
サリチル酸は一種の植物ホルモンです。
消炎鎮痛作用があるため古代からサリチル酸を含む植物が医薬品として用いられていました。サリチル酸の消化器症状を起きにくいように改良された医薬品がアセチルサリチル酸(アスピリン)です。
サリチル酸の血中濃度が上がると消化器症状(胃痛、吐き気)、神経症状(頭痛、めまい、耳鳴り、意識障害)などを起こしやすくなることが知られています。
サリチル酸やアセチルサリチル酸(アスピリン)は喘息症状悪化に関与することがあり、アレルギー症状を増悪させるco-factorとしての作用があります。
アセチルコリン
タケノコ、ヤマイモ、サトイモ、クワイ、トマト、ナスなどに含まれます。
アセチルコリンは自律神経のうち副交感神経を刺激する神経伝達物質です。
アセチルコリンが過剰になると消化器症状(吐き気、腹痛、下痢)、神経症状(徐脈、発汗、唾液分泌過多、意識障害)、呼吸器症状などが起きます。
気管支を狭くして喘息を悪化させるため、抗コリン薬は喘息治療にも用いられています。
アセチルコリンは拙著「ねころんで読めるアレルギー」にも登場するコリン性蕁麻疹の原因物質です。
チラミン
チーズ、ワイン、アボカド、バナナ、プラム、ナス、トマト、カカオ製品などに含まれます。
チラミンは生体内の酵素により産生されるモノアミンオキシダーゼ(MAO)です。血圧や心拍数を上昇させ、片頭痛の誘因となります。
ヒスタミン
魚類(マグロ、カツオ、カジキ、ブリ、サバなど)、発酵食品(チーズ、ワインなど)、ナス、トマト、とうもろこし、ほうれんそう、そば、牛肉、馬肉などに含まれます。
ヒスタミンは血管拡張や血管透過性を亢進して蕁麻疹や掻痒感を起こすといったアレルギー症状を引き起こします。
このため抗ヒスタミン薬は痒み止めの主成分として用いられています。
食品中に含まれるヒスチジンにヒスタミン酸性菌の酵素が作用することでヒスタミンが合成されます。ヒスチジンを多く含む食品を常温に放置するなど不適切な管理をするとヒスタミン酸性菌が増殖してヒスタミンが生成されやすくなります。
「冷蔵庫から出した食材は早めに調理するように心がけましょう!」。
「解いて学ぶ『おとな』の食物アレルギー」から抜粋(院長作)👇
トリメチールアミンオキサイド
カレイ、タラ、スズキ、タコ、アサリ、ハマグリ、エビ、カニなどに含まれます。
トリメチルアミンは魚が腐敗した時の悪臭の原因でもあります。
大事な事なので繰り返しますが、「冷蔵庫から出した食材は早めに調理するように心がけましょう!!」。
仮性アレルゲンの診断方法
上記のように食物の中には仮性アレルゲンを含み、アレルギー体質でなくてもアレルギー様症状を引き起こしてしまうものがあります。
これらの仮性アレルゲンの可能性も考えながら本当に食物アレルギーなのか?仮性アレルゲンの関与があるのか?といったことを鑑別していく必要があるため、食物アレルギーの診療は結構難しいです。
残念ながら仮性アレルゲンによる食物アレルギーの診断は詳細な問診に加えて特異的IgE検査陰性、皮膚テスト陰性を確認して除外診断をするくらいしか方法がありません。
「仮性アレルゲン」について簡単にまとめたつもりでしたが…読み返してみると医学的な予備知識がないと難しい話になってしまい申し訳ありません💦
難しい話を少しでもやわらげるために4コマ漫画を描きました。
