呼気一酸化窒素濃度
2023年11月から当クリニックでも呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を測定できるようになりました。
呼気一酸化窒素濃度(FeNO)とは
FeNOは今日の喘息診療において非常に有用な検査です。
喘息はアレルギーによって慢性的に空気の通り道(気道)に炎症を起こし、このために気道が敏感になって狭くなることで咳や呼吸困難を繰り返す病気です。
気道で好酸球、リンパ球、マスト細胞などの免疫細胞がアレルギー性の気道炎症を起こすと一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、エタン、ペンタンなどの炎症性物質が出てきます。
こういった物質の中でNOは慢性閉塞性肺疾患(COPD)など非アレルギー性の呼吸器疾患では増えない事から、喘息診療に応用されています。
FeNO測定値の解釈
健常人の平均は15ppbです。
22ppb以上だと喘息の可能性があり、37ppb以上だと喘息の可能性が非常に高くなります。
ただし、呼気NOは色々なことに影響されるため、得られた数字だけでなく総合的に判断をする必要があります。
当院のFeNO測定機器
当クリニックの測定機器は2023年に発売されたNO breath® V2です。
本邦においてFeNO測定は2013年から保険適応になりました。
保険適応が認められたFeNO測定機器はNIOX MINO®(2010年~現在販売中止)、NO breath®(2012年~現在販売中止)、NIOX VERO®(2015年~現在も販売中)、NO breath® V2(2023年~現在も販売中)です。
FeNO測定料金
呼気ガス分析100点と呼吸機能検査等判断料140点を合わせた保険点数は240点です。
1点=10円ですので、検査にかかる料金は3割負担の方は720円、2割負担の方は480円、1割負担の方は240円です。
測定機器によって値段は上下しますが、どの測定機器でも1回のFeNO測定にかかるランニングコストは呼気ガス分析で医療機関が得られる1000円を超えてしまいます。
FeNOは非常に有用な検査なのですが、実は呼気ガス分析費用のみでは採算がとれないという事が普及が十分でない問題のひとつとして挙げられます。
このため、呼吸器専門のクリニック以外ではFeNOを評価せずに喘息の診療を行っていることが多いようです。
院長が関わったFeNOに関する論文や依頼原稿
院長は初代のNO breath®を用いて研究を行い2014年に「本邦における呼気一酸化窒素濃度の機種差検討:オフライン法、NO breath®の比較」という論文で報告したことがあります。 https://doi.org/10.15036/arerugi.63.1241
この研究は相模原病院で行ったものであり、現在は聖マリアンナ医大の准教授である粒来崇博先生に主に指導して頂きました。
また、この論文は当時相模原病院センター長で闘病中でもあった秋山一男先生に病室で直接指導して頂いた、思い入れのある論文でもあります。
順天堂に戻ってからも似たような研究としてオフライン法とNIOX VERO®の比較を行いました。
こちらは後輩の田辺悠記先生を第一著者として2019年に英語の論文になっています。
Difference between two exhaled nitric oxide analyzers, NIOX VERO® electrochemical hand-held analyzer and NOA280i® chemiluminescence stationary analyzer. DOI: 10.1080/02770903.2018.1439953
その他に総説「FeNOとは-概論とガイドライン-」(喘息,26:106-111頁,2013年)や成人看護学2(2018年、2022年)などでFeNOに関する原稿も書いています。
内容の詳細は割愛しますが、近年の喘息診療においてバイオマーカーは非常に重要視されており、そのひとつがFeNOです。
当クリニックでは喘息を疑った患者さんに適切にFeNOを測定し、結果の解釈をしっかりと説明して適切な治療につなげていく方針で取り組んでおります。
いままでに喘息かもしれないと言われたことがある方は是非当クリニックでFeNOを測定してください。