メニュー

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (4コマあり)

[2026.03.08]

2026年2月末に「中村橋いとう内科クリニック (Nakamurabashi Ito Internal Medicine Clinic)」の名前が入った英語論文がパブリッシュされました。

これはベンラリズマブ(ファセンラ®)投与中に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)が増悪し、ステロイドの全身投与を挟まずにメポリズマブ(ヌーカラ®)投与への切り替えることによって病状の改善に成功した症例報告です。

このため今回の院長ブログは好酸球性多発血管炎性肉芽腫症について記載してみましたが…難病だけに医学的な予備知識がないとかなり難しい内容になってしまいました(;^_^A

難しいと感じたら読み飛ばして一番下の4コマ漫画だけ読んで頂けたら幸いです。

今回の論文で私は第二著者となりましたが、4コマ漫画を読むと論文における著者の順番に隠された意味がわかりますよ(^^)/

 

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)とは

EGPAは本邦において難病に指定されている疾患の一つです。以前はチャーグ・ストラウス症候群(Churg–Strauss syndrome)と呼ばれていましたが、2012年の国際会議で現在の病名に名称変更されました。

臨床的特徴は、先行症状として気管支喘息や鼻副鼻腔炎がみられ、末梢血好酸球増多を伴って血管炎を生じ、末梢神経炎、紫斑、消化管潰瘍、脳梗塞・脳出血・心筋梗塞・心外膜炎などの臨床症状を呈する疾患です。30〜60歳に好発し、男:女=4:6でやや女性に多いです。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45) – 難病情報センター

抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)のサブタイプであるミエロペルオキシダーゼに対する抗体(MPO-ANCA)が関与するANCA関連血管炎ですが、ANCAの陽性率は30%程度とそれほど高くないため、MPO-ANCAだけでなく症状・検査結果・病理所見などの組み合わせで診断する必要があります。

急性増悪の際にはステロイドパルス療法や免疫抑制剤などが必要となり、診断が遅れると命を落とすような病気です。

EGPAは治療によって寛解してもステロイド減量などによって再燃してしまうことが多々ありました。しかし、近年IL-5をターゲットにしたバイオ製剤(ヌーカラ®、ファセンラ®)の登場により良好な病勢コントロールができるようになってきました。

※MIRRA試験で安全性と有効性が示されたヌーカラ®がEGPAに2018年に保険適応となり、MANDARA試験でEGPA治療においてヌーカラ®と比較してファセンラ®が非劣勢であることが示された結果、2024年12月からファセンラ®も保険適応となりました。

 

MARS試験

96週間以上ヌーカラ®を使用しているEGPA患者を対象に実臨床におけるヌーカラ®の長期安全性および有効性を評価する国内、単群、多施設共同研究としてMARS studyが行われました。

抗がん剤やバイオ製剤など高額な薬は市場に出てから最初の1年程度は使うたびに臨床調査票を記載する必要があったりします。

私は臨床調査票を記載しないといけないような比較的早い時期から複数のEGPA患者にヌーカラ®を使っていた医師の一人です。

このため、MARS試験全体の数(118例)からしたら微々たる患者数であるものの、この試験にエントリーした順天堂の症例全例(7例)が私の担当患者であり、MARS studyにおいて投与中止に至る有害事象が出現してしまった2例のうち1例も私の担当患者さんだったりします。

 ※投与中止理由は途中で癌を併発してしまったことが原因であり、ヌーカラ®による副作用ではありません

このMARS試験によってEGPAに対してヌーカラ®が非常に長期間にわたって安全性と有効性が示すことが実証されています。

Modern Rheumatology, Volume 34, Issue 5, September 2024, Pages 978–987, https://doi.org/10.1093/mr/road109

今回論文化されたEGPA症例

前述のように私は当時の順天堂醫院で比較的多くのEGPA患者を診ていましたが、多くのEGPA患者を担当していると珍しいケースに遭遇します。

今回論文化した症例はファセンラ®というEGPAにも有効性が示されているバイオ製剤を使用していたにも関わらずEGPAが増悪し、ステロイドの全身投与を挟まずにヌーカラ®に切り替えただけで病状の改善に成功したという珍しいケースでした。

当初はクリニックの宣伝もかねて地方会などで発表し、すぐに投稿可能な日本語のジャーナルに投稿しようと考えていました。

スライドと仮論文を作成した上で私の計画を上司に相談したところ「英語論文にすべき」と諭され、ファーストオーサー(筆頭著者)として後輩が発表し、英語論文へ昇華されたものが世に出ることになりました。

日本語で原案となる仮論文を書いた2024年9月の時点ではファセンラ®投与中のEGPA発症は9例のみでしたが、今回の論文がパブリッシュされる2024年2月までの間に3例増えて12例になっています。

今後は似たような症例が更に増えてくるかもしれませんが、いち早く英語論文という形で報告することができたのはとても嬉しいです。

今回の論文作成にあたって似たような症例を先に論文化しつつメールで相談に乗ってくださった麻生飯塚病院呼吸器内科部長の飛野先生、私の拙い日本語論文を英文化して世に出してくれた斎藤先生、原田先生をはじめ、順天堂大学の喘息グループの皆様ありがとうございました。

この場を借りて深謝いたします。

Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis developed during treatment with benralizmab for severe asthma: A case report and literature review.

Sakabe M, Tobino K, Obata Y, Sogabe S, Uchida K, Murakami Y.Respirol Case Rep. 2024 Jul 9;12(7):e01431. doi: 10.1002/rcr2.1431. eCollection 2024 Jul.PMID: 38988828 

A Case of Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis Emerging During Benralizumab Therapy: Successful Management Through a Switch to Mepolizumab Therapy.

Saito Y, Ito J, Watanabe T, Tanabe Y, Sasano H, Sato Y, Jingo K, Nishimaki T, Matsuno K, Takahashi K, Harada N.J Asthma Allergy. 2026 Feb 26;19:568930. doi: 10.2147/JAA.S568930. eCollection 2026.PMID: 41778059 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME