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妊娠中・授乳中に使用可能な薬

[2024.07.21]

当クリニックは駅や電柱の看板広告をせず、ホームページなどネットを用いた宣伝しか行っておりません。

また、直接来院した方よりもアプリやホームページを利用して事前予約をした方を優先して診療を行っています。

このため、新規に受診して下さる方は比較的若い年齢の方が多い傾向があります。

妊娠中・授乳中の若い女性患者さんも増えてきたため、今回は「妊娠中・授乳中に使用可能な薬」について記載しました。

 

★妊娠中の安全性の評価について

妊娠中の安全性評価には下記があります。

FDA(アメリカ食品医薬品局)分類

A:使用実績からほぼ安全な薬

B:動物実験ではほぼ安全。もしくは動物実験で有害作用が報告されているが人に対するデータが少ない薬

C:動物実験では催奇形性などの報告がされているものの、ヒトに対するデータが少ない薬

D:明らかなリスクがあるが、状況次第で使用可な薬

X:危険度が高いため絶対禁忌の薬

 

オーストラリア医薬品評価委員会の分類

A:使用実績からほぼ安全な薬

B:使用経験が少なく、ヒトでの危険性を示す根拠が少ない薬。(動物実験の結果でB1~B3分類)

C:催奇形性はないが、胎児に対し有害作用のある薬

D:催奇形性の危険性もあるが、状況次第で使用可

X:危険度が高いため絶対禁忌の薬

 

Briggs基準

適合1:過去の妊婦への投与歴から胎児への危険性はないか、あってもごくわずか

適合2:過去の妊婦への投与歴はあっても限られているが、胎児への明らかな危険性はない

適合3:過去の妊婦への投与歴はあっても限られているが、胎児への危険性よりも有用性が明らかに勝る

適合4:過去の妊婦への投与歴はあっても限られているが、胎児への明らかな危険性は示されていない

リスク1:妊娠14週頃までは危険

リスク2:妊娠14週まで、もしくは妊娠28週以降は危険

リスク3:妊娠14週以降は危険

リスク4:妊娠28週以降は危険

リスク5:妊娠中の投与は避けることが望ましい

禁忌1:妊娠14週頃までは禁忌

禁忌2:妊娠14週以降は禁忌

禁忌3:妊娠全期間で禁忌

ND1:動物実験では明らかな危険性は示されていない

ND2:1つの動物種実験では危険性が示されている

ND3:2つの動物種実験では危険性が示されている

ND4:3つ以上の動物種実験で危険性が示されている

NDN:評価ができない

注参照:詳細が備考欄の「注」に記載されている薬

各成分参照:配合剤の全成分にBriggs基準のある薬剤。詳細は各成分を参照

※NDはNo (limited) human dataの略

 

FDA分類では妊娠のどの時期に、どの程度の量を、どの程度の期間使った場合にリスクがどの程度高くなるのかといった具体的な情報が解りません。

このため、FDAはこれらを添付文書に記載するように義務付け、カテゴリ分類を2014年に撤廃しました。

とはいえ、妊婦さんが受診した際に添付文書の説明を確認して処方していたら時間がかかり過ぎてしまいます。

こういった背景からBriggs(Briggs Drugs in Pregnancy & Lactation, 12 th ed.)基準が2022年以降の「今日の治療薬」に記載されるようになりました。

 

★授乳中の安全性の評価について

 乳児に対する薬の影響度合いが下記のようにL1~L5の5つに分類されています。

Medications and Mother’sMilk

L1:使用実績からほぼ安全

L2:研究数が少ないが有害報告なく、比較的安全

L3:対照試験はないが児に不都合な影響がでる可能性あり。有益性が上回る場合のみ投与。おそらく安全

L4:児や乳汁産生にリスクがある証拠があるが、有益性が上回る場合は許容

L5:危険度が高いためリスクが高い薬

 

妊婦加算の導入と廃止

妊婦さんの診療は胎児に配慮して薬を選択する必要があることなどから、妊婦さんの診療に消極的な医療機関があります

説明や薬の選択に時間がかかっても診療報酬が変わらないことが原因と考えられたため、2018年4月に妊婦加算が導入されました。

しかし、この加算分を妊婦さん本人が負担する必要があったことから、少子化対策に逆行するなどの意見が社会問題となり2019年1月から凍結され、2020年2月に廃止されました。

 

妊婦加算廃止後に残っている問題

1年もたたないうちに凍結された妊婦加算ですが、その後に新しい対策はとられていないため妊婦さんの診療に消極的な医療機関があるという問題は残ったままです。

「妊娠中だから薬は処方しない」と他院で言われて「コロナやインフルエンザの検査だけ行って投薬なし」という対応をされた妊婦さんが症状に耐えかねて当院を受診することがつい最近ありました。

これは妊娠中に処方する薬がないのではなく、安全性の説明が面倒だから処方しないのだと思われます。

ひとつひとつの薬について安全性を調べて、患者さんが安心できるように説明するのに手間がかかるのは事実です。

手間と時間をかけて説明しても診療報酬が変わらないのも事実です。

これは医療制度の問題が背景にあるため、個々の医療機関の対応だけが悪い訳ではありません。

当院ではこの問題を解決する取り組みとして、患者さんへの説明用「いとしんぶんVol.16」を作りました。

内科である当院に妊婦さんや授乳中の方が受診するのは発熱・咳などの症状で困った時だけだと思いますので、こういった時に使用する薬剤のみを記載しています。

妊婦さんや授乳中の方が受診した際には「いとしんぶんVol.16」を使用して説明し、これらの中から比較的安全なお薬を選択して処方させて頂きます。

他院で処方された薬の安全性に関する質問は対応しかねます。その薬を処方した先生に質問してください。

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