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運動誘発性喘息 (4コマあり)

[2026.01.12]

運動誘発性喘息とは?

運動誘発性喘息(Exercise-Induced Asthma: EIA)は、激しい運動によって気道が一時的に狭くなり、咳や喘鳴、呼吸困難を引き起こす状態を指します。運動中にこれらの症状が出現すると本来の力が発揮できなくなってしまいます。喘息が原因で運動をあきらめる学生やアスリートもいるかもしれませんが、適切に治療をすれば症状をコントロールすることができるため、運動をあきらめる必要がありません。

 

何が原因で起きるのか?

下記の二つの説が有力です。これらの二つの説は独立したものではなく、相互に関連していると考えられています。

Water loss説(浸透圧説)

運動によって酸素需要が増加して換気量が増えた際に空気が乾燥していると気道表面から水分が奪われます。これにより気道被覆液の浸透圧が上昇して細胞内から水分が奪われます。この刺激が引き金になって気道平滑筋が収縮して気道が狭くなるという説です。

Anderson, S. D., & Daviskas, E. (2000). The mechanism of exercise-induced asthma is... (Journal of Allergy and Clinical Immunology).

Heat loss説(熱交換説)

運動によって酸素需要が増加して換気量が増えた際に冷気を多く吸入すると気道が冷却されます。運動を停止すると冷えた気道が急速に再加熱されます。この急激な温度変化が引き金になって気道平滑筋が収縮して気道が狭くなるという説です。運動中よりも運動終了直後に症状が悪化する現象を説明するのに適しています。

McFadden, E. R. Jr. (1992). Hypothesis: exercise-induced asthma as a vascular phenomenon. (The Lancet).

 

EIAはトップアスリートに多い

意外なことに、オリンピックなどのトップアスリートにおける喘息の有病率は、一般人口よりも著しく高いことが研究で示されています。

有病率

 2002年から2010年までの夏季・冬季五輪5大会を調査した研究では、オリンピック選手の約8%が喘息を患っていました。さらに最近の2022年の調査では、欧州の夏季五輪選手の16.5%が喘息を有していると報告されています。

Rasmussen, F. et al. (2022). Asthma endotypes in elite athletes: A cross-sectional study of European athletes participating in the Olympic Games. (Frontiers in Allergy)

競技特性による差

特に「エンデュランス(持久系)種目」で顕著です。水泳、自転車競技、クロスカントリースキーなどの選手は、一般人の数倍高い割合で喘息を発症しています。例えば、水泳選手ではプールの塩素(トリクロラミン)による刺激が、冬季競技では冷たく乾燥した空気の大量吸引が、気道に慢性的な損傷を与える「スポーツ喘息」という独自の病態を引き起こすと指摘されています。

Fitch, K. D. (2012). An overview of asthma and airway hyper-responsiveness in Olympic athletes. (British Journal of Sports Medicine)

症状の予防方法は?

運動誘発性喘息は急激な激しい運動で誘発されやすいです。このため、日ごろからトレーニングをすることが必要です。運動前にウォーミングアップを入念に行うことは激しい運動時の症状発現を予防効果があるといわれています。何よりも重要なのは日々の喘息治療をしっかりと行うことです。

 

喘息を公表している主なスポーツ選手

多くの選手が喘息というハンデを克服し、世界最高峰の舞台でメダルを獲得しています。

下記は喘息であったことが公表されているアスリートです。喘息を乗り越えて大活躍していてすごいですよね!

選手名 競技種目 主な実績など

清水 宏保

スピードスケート

長野五輪金メダリスト。

幼少期からの喘息を克服。

羽生 結弦

フィギュアスケート

五輪2連覇(ソチ/平昌)。

2歳から喘息を持ち、徹底した健康管理で活動。

寺川 綾

水泳

(背泳ぎ)

ロンドン五輪銅メダリスト。

適切な吸入薬使用で成績向上。

田島 寧子

水泳

(メドレー)

シドニー五輪銀メダリスト。

喘息改善のために水泳を開始。

為末 大

陸上

(ハードル)

世界陸上銅メダリスト。

34歳で成人喘息を発症。

谷川 真理

陸上

(マラソン)

東京国際女子マラソン、パリマラソンなどで優勝

小学1年時に喘息発症

塚原 直貴

陸上

(短距離)

第15回アジア大会男子100mで銀メダル

5歳から喘息発症

吉田 沙保里 レスリング

五輪3連覇。世界選手権13連覇

33歳で喘息発症

谷本 歩実 柔道

五輪2連覇(アテネ/北京)

幼少期に喘息発症

秋本 啓之


柔道

世界柔道選手権などで優勝

幼少期に喘息発症

大山 加奈 バレーボール

日本代表としてアテネオリンピック出場

幼少期に喘息発症

福原 愛 卓球

ロンドン五輪女子団体で銀

27歳で咳喘息発症

深瀬 菜月


新体操

ロンドン五輪女子団体7位

小児~中学まで喘息

藤川 球児 野球

NPB(阪神)、NBA(カブス)で活躍

幼少期に喘息発症

小笠原 道大 野球

 NPB(日ハム、巨人など)で活躍

プロ1年目は喘息で苦戦

久保田 智之


野球

シーズン最多登板数記録保持者(90登板)阪神

幼少期に喘息発症

岡崎 槙司 サッカー

元日本代表。

幼少期に喘息発症。

福島 晃子 ゴルフ

日本女子プロゴルフツアー賞金女王2回

3歳から喘息発症

長谷川 穂積 ボクシング

世界3階級制覇王者

2階級制覇後も喘息で苦戦

名城 信男 ボクシング

元スーパーフライ級王者

幼少期に喘息発症

八重 樫東 ボクシング

世界3階級制覇王者

選手時代も喘息で苦戦

高山 善廣 プロレス

和製ブルーザーブロディーの異名で活躍

幼少期に喘息発症

隆の里俊英

相撲

第59代横綱。鳴門親方

3歳で喘息発症

錦織 圭

テニス

自己最高世界ランキング4位

30歳頃に喘息発症

デビッド・ベッカム サッカー

元イングランド代表。

吸入器を使用する姿が報じられ公表

トム・ドーラン 水泳

五輪2連覇(アトランタ/シドニー)

重度の喘息を克服。

 

個人的な経験談

公表した選手ではないために名前は書けませんが、順天堂の外来をしていた頃は箱根駅伝の選手、プロバスケットボール選手、プロサッカー選手、アメフトの代表選手などなど多くのトップアスリートの相談/治療を行ったことがあります。

長距離を走ると息切れ・咳・喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸)が起きてしまう方は運動誘発性喘息の可能性があります。正確な診断には大きな病院でないとできない気道過敏性試験が必要ですが、呼気一酸化窒素検査や呼吸機能検査で診断ができることも多いです。

記憶に残る症例として、雑草・カビ・ハウスダストなどのアレルギーがあり、重症喘息のために運動時だけでなくスコアラーとしてベンチに行くだけでも喘息発作がでてしまった男の子にちゃんと治療介入したことで選手として活躍できるまで症状をコントロールすることができたお子様もいました。

心当たりがある方は一度しっかりと検査してみてはいかがですか?

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