金属アレルギー (4コマあり)
パッチテストが必要となる金属の食物アレルギーは内科医だけでは診断することができません。
先日食物アレルギー外来を受診後に金属アレルギーの診断をつけることができた患者さんがいたため、今回は金属アレルギーについて院長ブログを記載します。
微量金属アレルギーとは
微量に含まれる金属に対して過剰に反応してしまうアレルギーを微量金属アレルギーといいます。
ニッケル、クロム、コバルトなどが原因となり、ピアスやアクセサリー、歯科金属、調理器具など日常生活に関わる多くの製品が関与します。
金属アレルギーといってもただ金属に触っているだけでアレルギー症状が出る訳ではないため、患者さん自身では気づきにくいことが多いです。
金属アレルギーは金属が汗や酸性の飲料水などでイオン化して皮膚や粘膜から吸収され、感作されることで発症します。
接触性皮膚炎として発赤、痒み、水泡などが出現する場合は比較的診断しやすいですが、後述する歯科金属などが原因となっている場合は診断に苦慮します。
歯科金属のアレルギー
イオン化した金属が原因となる場合は、ある一定の条件がそろわないと症状がでないため診断が難しくなります。
歯科金属にアレルギーがあったとしても常に症状が出る訳ではありません。
例えばトマトジュースやオレンジジュースなど酸性の飲料水を飲んで金属がイオン化しやすい状況になった時にしか症状がでないことがあります1)。
このため、患者も医師もオレンジジュースなどのアレルギーと勘違いしてしまい、酸性飲料水で金属がイオン化しやすくなるという発想を持った医師でないと迷宮入りしてしまいます。
金属を含む食材
野菜や果物、魚介類、ワインやチョコレートなど微量に金属を含む食品があります。また、金属製の鍋ややかんで調理するとアルミニウムや合金が溶け出し、それがアレルギーの原因となる事もあります。
このため、金属による食物アレルギーの場合は相当深く問診を行なわないと診断や検査にたどり着くことができません。
ニッケル(Ni)を含む食品には大豆製品、ナッツ類(栗、くるみ、カシューナッツなど)、穀類(そば、玄米、オートミールなど)、魚介類(うに、はまぐり、いわしなど)チョコレート、ココア、柿、グレープフルーツ、いちじくなどがあります。
クロム(Cr)を含む食品には穀類(そば、玄米、オートミールなど)、魚介類(うに、うなぎ、いわしなど)、ピスタチオ、チョコレート、ココア、柿、いちじく、ビールなどがあります。
コバルト(Co)を含む食品には穀類(そば)、魚介類(うに、はまぐり、いわしなど)、栗、果物(ぽんかん、すいかなど)、ココアなどがあります。
鉄(Fe)を含む食品には赤身肉、レバー、貝類、ホウレンソウなどがありますが、鉄瓶などでお湯を沸かした際にも摂取量が増えるため注意が必要です。
亜鉛(Zn)を含む食品には牡蛎、牛肉、ナッツ類があります。
銅(Cu)を含む食品にはレバー、ナッツ類、カカオなどがあります。
また、産地や製造過程によって違いがありますが、ワインには鉄、銅、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ニッケルなど複数の微量金属が含まれるため、重症の金属アレルギーがある場合には注意が必要です。
金属アレルギーの診断方法は?
診断方法の詳細は「金属アレルギー診療と管理の手引き2025」に記載してありますが、金属アレルギーは採血検査で調べることができず、パッチテストを行う皮膚科でないと検査をすることができません。
パッチテストは汗をかきやすい夏場には検査しにくいという難点があり「いつでもどこでも」検査できるものではありません。
しかも、接触性皮膚炎として金属アレルギー症状がでる場合と違って、食物アレルギー症状しかない場合に最初から皮膚科を受診することはほとんどありません。
また、詳細に問診をして金属アレルギーを疑うところまでたどり着くことができる時間と腕をもったアレルギー専門医は少ないため、複数の医療機関や診療科を経て初めて診断されることが大半です。
つまり、微量金属の食物アレルギーは「いつでもどこでもだれでも(Anytime Anywhere Anyone)」検査・診断できる訳ではない診断難易度格付け評価「AAA」で最高難度の食物アレルギーなのです2)。
金属アレルギーの実例
今回のブログで提示する症例はワインやビールなどのアルコール摂取時に頻出する原因不明の蕁麻疹、めまい、動悸、呼吸困難などで困っていた女性です。
多項目アレルギー検査の検査結果は全て陰性であったことからアルコールは誘発因子だという説明を他院で受けていました。その後も救急搬送されるような症状が出現することがあったため、心配になり当院の食物アレルギー外来を受診しました。
症状が出現した原因と考えられる食べ物を列記すると…「ワイン、ビール、小豆のパウンドケーキ、栗のラム酒漬け、カズノコ」といった具合に共通点が見つけにくい状況でした。
追加質問をすると「ピアスで耳の穴が腫れたことがある」という診断の糸口があったため、金属アレルギーを疑いました。
後日皮膚科でパッチテストを行ったところ、ニッケルが強陽性、スズ/パラジウムが中等度陽性、コバルト/鉄/白金/重クロム/亜鉛/金が弱陽性といった具合に金属アレルギーの診断がつき、歯科金属を金属以外のものに変更する方針となりました。
前述したように小豆、栗などにはニッケルが含まれ、ワインには鉄、銅、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ニッケルなど複数の微量金属が含まれます。
それだけでなくワインは酸性飲料(pH:2.9~3.9)であるため金属がイオン化しやすいという要素や、アルコールというアレルギー症状を増強させる補助因子(co-factor)の要素も加わっていたかもしれません。
上記の患者さんのように診断をつけることができることもありますが、金属アレルギーは診断難易度格付け評価「AAA」です。
開業医での対応は難しいことが多いため、アレルギー疾患医療拠点病院の受診をお勧めします。
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チョコレートにも注意
今週は2/14のバレンタインデーがありますが、チョコレートはニッケルやクロムなどの微量金属を含む代表的な食べ物のひとつです。
甘いので虫歯になって歯科金属を入れることにならないように注意する必要もあります。
チョコレートを食べてアレルギー症状が出現してしまった方は鑑別の一つとして金属アレルギーの検査をしてみると原因が究明できるかもしれません。
因みにミルクチョコレートよりもダークチョコレートの方がニッケルアレルギーを起こす可能性が高いことが報告されています3)
co-factorであるアルコールを含み、甘みを抑えたダークチョコレートでコーティングしたウイスキーボンボン(洋酒入りチョコレート)などはアレルギー症状を起こし易いかもしれません。
1) Adachi T, et al. Acidic oral environment's potential contribution to palladium-induced systemic contact dermatitis: Case report. J Allergy Clin Immunol Glob. 2024 Aug 28;3(4):100333.
2) 「ねころんで読めるアレルギー」伊藤潤 著. メディカ出版. p107-110
3) Chocolate and Skin: The Impact of an Insatiable Indulgence. Indian Dermatol Online J. 2022 Oct 21;13(6):806-809.
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