長引く咳の診療の質
寒くなり、感染症や咳の患者さんが増える時期になりました。
このため、今回の院長ブログは長引く咳の診療の「質」について記載しました。
立場は質を変える
咳の診療はどれくらい咳の鑑別ができるのか?によって大きく診療の質や処方が異なります。
咳に対して持っている医師の知識だけでなく、検査ができる/できないといった違いで大きく診療の質が異なります。
特殊な状況を除けば急性咳嗽では診療の質はそれほど大きく診療の質は異なりません。
しかし長引く咳(遷延性咳嗽~慢性咳嗽)では診療の質が大きく異なります。
例えば以下の①~④では診療の質が大きく異なります
①高度な検査が可能な大病院で勤務する呼吸器専門医
②呼吸器系の検査ができる医療機関で働く呼吸器専門医
③呼吸器系の検査ができない医療機関で働く呼吸器専門医
④呼吸器系の検査ができない医療機関で働く非呼吸器専門医
①高度な検査が可能な大病院で勤務する呼吸器専門医
知識も検査機器もある①は最も診療の質は高いのですが、待ち時間は非常に長くなってしまいます。
例えば私が以前勤めていた順天堂医院はアストグラフ(気道過敏試験)や咳感受性試験など特殊な機械がないとできない検査を行うことができました。
これらの検査が必要な難しい咳の場合は小さな医療機関での対応は困難であり、検査可能な医療機関に紹介する必要があります。
②呼吸器系の検査ができる医療機関で働く呼吸器専門医
他の医療機関で改善しない患者が集まってくるため②も待ち時間は長めです。しかし、必要な検査ができるため診療の質は担保されます。
院長が呼吸器専門医である場合は咳の鑑別に必要な検査機器(レントゲン、スパイロメーター、FeNOなど)は十中八九導入しています。
鑑別に必要な検査ができる医療機関で働く医師であればガイドラインに従って検査を進めることができるため、アルバイトの非常勤医であったとしても診療の質が保たれます。
③呼吸器系の検査ができない医療機関で働く呼吸器専門医
検査ができないアルバイト先の医療機関で働く呼吸器専門医が③にあたります。
咳診療に必要な知識があっても必要な検査ができなければ当然診療の質が落ちてしまいます。
私もアルバイトの非常勤医の立場であった時に、必要な検査したくても検査できないモヤモヤした気持ちを抱きながら診療をせざるを得ない状況が多々ありました。
検査ができないため、処方した薬の反応を見ながら疾患の鑑別をせざるを得ません。週1回のバイト先の場合には自分がまた診療するのは1週間以上後となるため、どうしてもタイムラグがでてしまう上に適切な治療薬を探り当てるまでの期間が長くなってしまいます。
医師の知識が十分あったとしても置かれている立場で診療の質が低下してしまう典型例が③です。
④呼吸器系の検査ができない医療機関で働く非呼吸器専門医
検査ができない/できるけど検査しない非呼吸器専門医につい書きすぎると誹謗中傷と言われてしまうので多くは記載しませんが、ちゃんと鑑別をせずに絨毯爆撃のように一度に多くの薬を処方する先生が稀にいます。
このような処方をされてしまうと、その後の鑑別が非常に困難になります。
検査ができない医療機関④の典型例はオンライン診療です。オンライン診療は非対面という特性上、触診を実施できず、患者から得られる情報はどうしても限られてしまいます。こうした背景から、オンライン診療は原則として「かかりつけ医」が行うものと厚生省のHPで記載されています。
しかし、咳を主訴に受診する際には気軽に予約が可能な「非かかりつけ医」のオンライン診療を選択する患者さんが結構います。そして、その際に処方される内容は何を鑑別してこの処方をしたのだろう⁇と疑問に思う処方内容が多いです。
スムーズに改善しなかった患者がたまたま私の外来を沢山受診するため、疑問を感じる処方を目にする機会が多いだけかもしれません。このため④に関する記載は「それってアナタの感想ですよね?」と私に質問されたら「その通りです」と即答する内容です(;^_^A
患者も質を変える
高度な検査が可能な大病院や呼吸器系の検査ができる医療機関であったとしても診療の質が下がることがあります。
例えば受診時に「他院で処方された薬が解らない」と診療の質が下がります。
「処方内容はマイナンバーカードで解るはずだ!」と主張する患者さんがたまにいますが、現時点ではマイナンバーカードではレセプトが提出された先月の内容までしか処方内容を検索できず、直近の処方内容が確認できないため十分な情報とはいえません。
また、電子カルテと連携されていない電子機器(スマホなど)で処方内容を伝えることも時間のロスやカルテ記載の手間を考えると適していません。
アナログですが、スキャン可能な紙媒体が一番確実で便利です。
「他院で検査した結果がわからない」場合も診療の質が下がります。
短期間で受診先を転々と変えるドクターショッピングの患者さんは薬の処方内容だけでなく検査データや画像が解らないことが多い傾向があります。
検査結果に関しても電子カルテと連携されていない電子機器(スマホなど)による伝達は適しておらず、診療の質を落とさないためには紙媒体やCD-ROMで画像を共有すべきです。
他院受診後に診療をする後医は処方内容や検査内容から前医が何を考えて何を鑑別したのかを推測しながら診療を行います。与えられる判断材料(処方内容や検査結果)が少なければ少ないほどその推測は困難になり、診療の質が低下してしまいます。判断材料が少なければ、後医も名医ではなく迷医となってしまう可能性が高くなります。
「症状経過の伝達が不明確」な場合も診療の質が下がります。
必要な情報以外を沢山しゃべると必要な情報が薄まります、必要な情報を伝えてくれない場合も診療の質が下がります。
「受診先が不適切」な場合も診療の質が下がります。
オンライン診療の前提条件では「かかりつけ医は日頃から対面診療を行っているため、患者の健康状態や診療歴をよく理解しており、定期的な診療で頻繁に顔を合わせて患者との信頼関係も築けている」という理由で初診対応を許可されています。
しかし、実際にオンライン診療で初診対応する医師は厚生省のHPで定義されている「かかりつけ医」から外れていることが多々あります。
自分の都合を優先して「かかりつけ医」でない医師に初診のオンライン診療を依頼するといった患者側の不適切な選択も診療の質を下げる一因だったりします。
咳の診療は奥深く、「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025」をちゃんと読んでいても診療に苦渋することがあります。
少しでも診療の質を上げることができるように、長引く咳で当院を受診する際は可能な限り、「前医での処方内容」、「前医での検査結果」、「治療経過」、「紹介状」などを事前に用意してください。
宜しくお願いいたします。
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