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2024年10月からの医療費

[2024.09.15]

今回のブログでは2024年10月から患者さんが支払う医療費が少し変わる点について記載します。

後発医薬品について

2024年10月から医薬品の自己負担の新たな仕組みとして、後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望される場合は、特別の料金を支払う必要があります

 

特別の料金とは

先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金のことです。

厚生省が提示した下記の図のように後発医薬品があるのに先発医薬品を選択すると負担額の総額が増えます。

※厚労省HPから引用

例えば、先発医薬品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円の場合、差額40円の4分の1である10円を、通常の1~3割の患者負担とは別に特別の料金として支払う必要があります。

薬代の差額が400円の時は100円、差額が4,000円の時は1,000円余計に特別の料金を支払う事になります。

塵が積もると痛いですね…

2024年10月からは「使用感」や「味」など薬の有効性に関係ない理由で先発医薬品を希望する場合には、これらの特別料金を支払う必要がありますのでご注意ください。

 

先発医薬品と後発医薬品の違い

国の認識では有効成分がほぼ同じであれば同じように使えると考えているようです。

しかし、実はそんなに単純な話ではありません。

先発品と後発医薬品の効果が異なる代表的な薬剤としてホクナリンテープ®があります。

ホクナリンテープ®の有効成分の特許は切れていますが「結晶レジボアシステム」というテープに関する技術の特許は切れていません。

このため、有効成分が同じでも効果が異なります。

皮膚への透過性を調べた文献では、角質層にダメージがある場合はツロブテロールテープだと皮膚浸透性が一気に亢進してしまい、効果が長時間持続しないことが報告されています(Biol Pharm Bull.2010;33:1763-5)。

しかし、国が認可した後発医薬品として市場に出回っています。

他にも有効成分が同じでも腸で溶けるはずの薬剤が胃で溶けてしまうなど、問題のある薬が存在することが知られています。

多くの薬剤では先発品と後発医薬品で効果が異なる事はありません

しかし、中にはこういった効果に違いがでてくる薬剤があるので注意が必要です。

 

オーソライズド・ジェネリック

ジェネリック医薬品の中には「オーソライズド・ジェネリック」というものもあります。これは先発医薬品の製薬会社が特許権をオーソライズ(公認)したジェネリック医薬品です。

このため、先発製剤と原薬・添加物・製法・形状・色・味が同一で、製造工場・効能・効果も、一部の例外を除き先発医薬品と同一です。

こちらの方がより安心して使えるのかもしれませんが、「一般名+メーカー名」で記載されるだけなので一般の人では見わけがつきません。

 

後発医薬品を推進する上での問題点

日本の医療費は年々増加しているため、これを下げるための対策が必要です。

その対策のひとつとして後発医薬品の推進や薬価の引き下げがあります。

薬価改定により国が強制的に薬価を下げられた際に、製薬会社はどこかを削って利益を保とうと努力します。

利益を保つために安全面を削って薬価を下げるのは困りますが、努力しても利益が保てないために薬の生産自体をやめてしまうのも困ります。

後発医薬品メーカーは大手と異なり薬価引き下げに耐える体力が少ないため、引き下げすぎると生産をやめてしまうリスクが高まります。

また、後発医薬品メーカーは生産ラインが少ないためにトラブルがあるとすぐに生産が滞ってしまうのが問題です。

実際問題として解熱剤、鎮咳薬、去痰薬、抗生剤などが不足しているのはこういった国による強制的な薬価引き下げが一因になっています。

有効な薬だったのに薬価が低いために生産が中止されてしまった薬剤がいくつもあります。

一方で値段に対する効果が乏しいのになぜか保険適応になっている薬もあります。

※体重50kgの人を1人治療するのに約300万円かかり、アメリカの試算した費用対効果は年間78万円未満とされているのにもかかわらず2023年から日本で承認された薬などが代表例です…

こういった問題に適切に対策してくれる人が次の総理大臣になることを願うばかりです。

 

医療DX推進体制整備加算(DX加算)

DX加算はマイナ保険証の利用実績が一定程度有している医療機関が算定できる加算です。

このDX加算が2024年10月から変更されます。

今後2025年1月、2025年4月にも変更される予定が組まれています。

マイナ保険証の利用率が高い医療機関は多い点数を算定でき、低い医療機関は国の方針に非協力的だとみなされて算定できなくなる加算です。

一定程度というのが先日下記のように厚労省から公開されました。

 

加算1→7点

加算2→6点

加算3→4点

要件

(変更部分)

マイナ保険証の利用について十分な実績を有していること

(マイナポータル等の医療情報に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること)

マイナ保険証の利用について十分な実績を有していること

(マイナポータル等の医療情報に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること)

マイナ保険証の利用について十分な実績を有していること
R6.10~12月 利用率15% 利用率10% 利用率5%
R7.1~3月 利用率30% 利用率20% 利用率10%
R7.1月 未定 未定 未定

※1点は10円で計算されます

当院の状況

・5月~7月のレセプト件数ベース利用率の最高値 4%

・6月~8月のオンライン資格確認件数ベース利用率の最高値 3%

であったと厚労省から通達があり、利用率が低いため10~12月はこのDX加算はとれなくなることが判明しました。

マイナ保険証の利用率が低い医療機関は受診時に利用率向上のための声掛けやポスター掲示をしているか抜き打ちで調べに来るという噂もあります(涙)

ちなみにマイナ保険証利用率8月は全国平均12.43%、医科診療所平均10.4%です。

こんな状況のまま12/2から紙の保険証の発行を停止し、マイナ保険証に一本化しても大丈夫なのでしょうか?

各地の医療現場で混乱が起きそうで怖いですね…

どうせDX加算がとれないなら開き直って「当院では10~12月の医療DX推進体制整備加算が取れないので、他の医療機関より受診料が安いですよ~」ってアピールするのもありかなぁと思ってしまいました。

 

なぜマイナ保険証の利用率が上らないのか?

正直なところ現時点において診療所レベルではマイナ保険証の利便性をあまり感じることが出来ません。

例えば診療所を受診する患者さんは、症状が改善しないと数日単位で医療機関を切り替えるといったドクターショッピングをする割合が高いです。

マイナ保険証から入手できる薬の情報は数日単位の変化には対応していません。厚労省やデジタル大臣がどこまで把握しているのか不明ですが、マイナ保険証からの情報収集はいつもスムーズな訳ではなく、現時点では数時間かかる事も度々起きてしまっています。診療所における日常診療ではお薬手帳の方が格段に有用であるのが現状です。

また、たまに携帯電話に保存している薬の情報を見せてくれる患者さんがいます。

しかし、携帯電話のお薬手帳だと操作するのは薬の知識のない患者さん本人になるので時間がかかる上に電子カルテに転記する手間がかかるため、コピーして保存ができるお薬手帳の方が格段に有用です。

マイナ保険証の利用率が低い当院では関係ないのですが、加算1~2をとるマイナ保険証の利用率が高い医療機関では「マイナポータル等の医療情報に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること」という文言も加わり、利用することで更に医療者側の手間が強制されることになりました。

これらは現場の利用方法を無視したDX化がむしろ迷惑となっている典型例だと思います。

必ずしもアナログよりデジタルの方が優れている訳ではないので、個人的には併用できる方が良いと考えます。

本来、マイナ保険証の利用率を引き上げるために必要な事は、患者および医療機関スタッフの利便性向上であり、安心してマイナ保険証が利用できる環境整備だと思います。

マイナ保険証の利用率を上げさせたいがために、各医療機関に手続きや声掛けなど面倒なことを押し付けて現場の手間を増やすといった方法で上る利用率はたかがしれています。

実際、補助金を投じた医療機関の声掛けキャンペーンで上った全国平均利用率は9.90%(6月)→11.13%(7月)→12.43%(8月)程度です。

マイナ保険証の問題だけでなく、定額減税の記入を給与明細に義務付けたり、インボイスを導入したり、現場で余計な手間が増えるという事実を無視しせず、現場の声を「聞く力」のある人が次の総理大臣になることを願うばかりです。

 

今回は政治的なことにも言及した院長ブログとなってしまいましたが、特に支持者・支持政党がある訳ではありません。

純粋に現場の手間が増えることを配慮しない政策に振り回されることで、医療に集中できない事に対する不満をつぶやいただけです。

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