新型コロナワクチン 2024年秋
2024年秋に接種可能な新型コロナワクチンは5種類あります。
5つも選択肢があるとどれが良いのか迷ってしまいますよね?医師である私も選択に迷います。
選択基準は視点の違いから変わってきますので、今回は開業医の視点で新型コロナワクチンに関して記載してみました。
共通点と相違点
共通点
- オミクロンJN1株に対応
- 筋肉注射
- 初回でも追加免疫でも使用可能
JN1株の増加によってXBB.1.5株対応ワクチンの有効性が減弱したという報告※)がありますが、今回の5種類は全てJN1株対応のワクチンとなっています。
相違点
- 作用機序(mRNAワクチン、レプリコンワクチン、組み換え蛋白ワクチンの違い)
- 調整方法(溶解希釈が必要なもの、薬液充填が必要なものといった違い)
- 接種人数
などがあります。以下に詳細を記載します。
mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン
mRNAというウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部を注射します。人の体の中でこの情報をもとにウイルス蛋白質の一部が作られ、それに対する抗体ができることで効果を発揮します。
コミナティ®(ファイザー)、ダイチロナ®(第一三共)、スパイクバックス®(モデルナ)、といった3種類の製品があります。
スパイクバックス®(モデルナ)は-20±5℃の管理では18ヶ月もつものの、2-8℃の管理では1ヶ月しか持たない事から、クリニックレベルでは使用困難と判断し、当院では採用しない事にしました。
コミナティ®(ファイザー)は1人ずつのプレフィルドシリンジであり、薬液充填の手間がありませんが10人分ずつの購入となります。1回の接種量は0.3mlで他の製剤よりも少ないです。
ダイチロナ®(第一三共)は2人ずつのバイアルであり、薬液充填の手間がかかり、1回の接種量は0.6mlで他の製剤よりも多めです。
未使用の際に返品が効く・効かないという違いもあります。
レプリコンワクチン
mRNAワクチンのひとつですが、接種されたmRNAが細胞内で一時的に複製されるように設計されている事から、既存のmRNAワクチンよりもウイルス蛋白が作られる期間が長く、効果持続期間が長い事が確認されています。
コスタイベ®(Meiji Seikaファルマ社)の製品がありますが、-20±5℃の管理では12ヶ月もつものの、2-8℃の管理では1ヶ月しか持たない事、1バイアルが16回分であることから1回の接種に多くの患者さんを集めないといけません。
また、溶解・希釈の手間もかかることなどからクリニックレベルでは使用困難と判断し、当院では採用しない事にしました。
組み換え蛋白ワクチン(不活化ワクチン)
新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質の遺伝子をもとに作られた組み換えタンパク質をナノ粒子化した製剤で、免疫の活性化を促進するためのアジュバンドが添加されています。他のワクチンでも使用実績がある方法でつくられたワクチンです。
ヌバキソビット®(タケダ)の製品があり、他のワクチンの追加免疫は3ヶ月ですがこのワクチンだけ6ヶ月後の間隔になっています。2人ずつのバイアルであり、薬液充填の手間がかかります。
接種対象者と費用
新型コロナワクチンの定期接種対象は
・65歳以上の方
・60歳から64歳までの一定の基礎疾患を有する方
です。
新型コロナワクチンと他のワクチンとの同時接種も可能であり、他のワクチンとの接種間隔に制限もありません。
先日、練馬区から報告された単価は15,391円でした。
定期接種対象の方で23区および武蔵野市、西東京市の方は補助があるため自己負担額2,500円で接種可能です。
任意接種の方は全額自己負担となります。当院で接種する場合は端数を繰り上げて15,400円とさせて頂きます。
当院で採用するワクチンと接種開始時期
補助がある方の自己負担額は2,500円でインフルエンザワクチンと大差ありません。
しかし、新型コロナワクチンはどれもインフルエンザワクチンの数倍高い金額であるため、急なキャンセルが出た時に医療機関に降りかかってくる損失額はインフルエンザワクチンと比較すると数倍高い金額となってしまいます。
1つのバイアルで複数の人数に打てるタイプのワクチンの方が薬価差益はあるのですが、キャンセルが出た場合や使いきれない場合には薬価差益で得た小さな利益は簡単に吹っ飛んでしまうリスクがあります。
こういったリスクを考慮して当院では薬価差益は少なくても一人ずつ接種可能なコミナティ®(ファイザー)を選択することにしました。
1回の接種量が0.3mlと少ないことが患者さんにとってコミナティ®(ファイザー)のメリットだと思います。
国産にこだわる方や不活化ワクチンを希望される方は他のクリニックを当たって下さい。
当院での新型コロナワクチンの接種開始時期は早くても10月中旬以降、接種日は2人体制の診療日のみとさせて頂きます。
遅めの設定で申し訳ありませんが、接種を希望される方は電話にてご予約下さい。