抗インフルエンザ薬
インフルエンザについて
この図に示されている赤線のように、2023年は例年よりも早くからインフルエンザが流行しています。
A型だけでなくB型インフルエンザ感染症が早くも出現し始めています。
インフルエンザの流行状況(東京都 2023-2024年シーズン) | 東京都感染症情報センター (tokyo.lg.jp)
このため、今回はインフルエンザ治療薬について記載してみました。
抗インフルエンザ薬の作用機序
インフルエンザウイルスは体内に侵入した後に細胞の中で新たなウイルスを作ってどんどん増殖していきます。増殖したインフルエンザウイルスはノイラミニダーゼという酵素を使って細胞の外に飛び出すのですが、このノイラミニダーゼの働きを抑える薬がノイラミニダーゼ阻害薬(NA阻害薬)です。細胞の外に飛び出すことができないウイルスは細胞の中にとどまったまま死滅してしまうので、NA阻害薬がインフルエンザの治療薬として用いられています。
抗インフルエンザ薬が必要な人
抗インフルエンザ薬を投与しなくても治りますが、合併症のリスクが高い方はなるべく早期に投与した方が良いと考えられています。
・5歳未満の幼児
・65歳以上の高齢者
・慢性の肺疾患(気管支喘息を含む)、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病など)、神経疾患
・免疫抑制状態の患者
・妊婦および出産後2週間以内の産褥婦
・アスピリンまたはサリチル酸を含む薬物治療を受け、ライ症候群のリスクがある18歳以下の患者
・BMIが40以上の高度肥満者
・ナーシングホーム等の長期療養施設入居者
などが合併症リスクの高い方となります。
抗インフルエンザ薬の投与時期
48時間以内に使用するのが原則!
発症後48時間を超えるとインフルエンザが体内で十分増えてしまっているため、抗インフルエンザ薬を投与する時期を逃すことになります。
48時間を越えたら投与できないのか?
48時間以降の投与でも呼吸器症状を短縮させる傾向があるという報告もあり、投与できない訳ではありません。CDCの報告では「発症から48時間以上経過している場合はオセオタミビルによる治療が推奨される」と記載されています。
予防投与について
インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者である場合に予防投与を行う事があります。
高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿病など)、腎機能障害患者など重症化リスクが高い患者が対象となります。
上記に該当する場合は薬の内服により大きな副作用が出た場合に「医薬作用被害救済制度」の対象となります。
薬によって予防投与ができない場合が異なります。治療適応の範囲であってもタミフルは新生児、乳児(1歳未満)では予防投与が推奨されません。ゾフルーザは10kg以上20kg未満では予防投与は推奨されていません。
また、予防投与は保険が効かず、自費診療となります。前述のリスクが高い患者に該当しない場合の予防投与は薬剤の添付文書に記載されていない使用法のため、万が一重い副作用が起こっても「医薬作用被害救済制度」の対象外で、補償を受けられないデメリットがあることにも注意が必要です。
とはいえ、受験生なので予防しておきたい、大切な仕事があるため会社を休むことが出来ないなど自費診療で良いから抗インフルエンザ薬が欲しいという状況はしばしばあると思います。当院で予防投与を希望される方は下記のリンクをご参照ください。
自費診療 | 中村橋いとう内科クリニック (itoito-clinic.com)
ネット通販で入手する場合
薬だけを手に入れたいという場合に、タミフルやリレンザはネット通販を利用すれば入手することが可能なようです。しかし、2023年12月の時点ではジェネリックのオセオタミビルは品薄で手に入りにくく、タミフルは10錠で10,350~13,760円前後かつ手元に届くまでに14~28日ほどかかってしまうようです。
抗インフルエンザ薬のまとめ
抗インフルエンザ薬として国内承認されているものの、主要薬ではないアマンタジン(シンメトレル®)、ファビピラビル(アビガン®)を割愛し、現時点での主要薬を下記のように表にまとめました。
上記の表に記載した値段は薬価のみの記載であり、実際の診療では初診料、検査費用、処方料、調剤料、調剤技術基本料、薬剤情報提供料などが加わるため、1~1.5万円(保険により1~3割)くらいになります。
ワクチンとマスク・うがい・手洗いでしっかりと予防するのが一番安上がりですのでしっかりと予防してください。