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「薬だけください」がダメな理由

[2024.11.10]

受付で「いつもの薬がなくなったけど時間がないのですぐに出して欲しい」「診察はいらないから薬だけ欲しい」「前に通院していたところは診察せずに薬だけくれた」と主張する患者さんがごくごく稀にいらっしゃいます。

症状に変わりがないので薬だけもらってサッサと帰りたいという気持ちは解りますが、無診療診察は医師法違反にあたるため「薬だけください」という希望に合わせて診療せずに処方箋を渡すことはできません。

 

“医師は、自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付してはならない。(保険診療としても当然認められない。) 医師法20条”

 

このように医師法に記載してあるため「診察はいらないから薬だけ欲しい」とごねる事は医師に対して「犯罪行為をしろ」と言っていることになります。

診察せずに処方している医療機関が存在するのは事実かもしれませんが、当院では診察なしでの処方はできませんのでご了承ください。

 

薬だけもらって帰る危険性

・副作用に気づきにくい危険性

薬には作用があれば副作用もあります。

診察しないで処方することが続くと薬の副作用に気づかずに見過ごしてしまう危険性が高くなります。

自覚症状がある場合はもちろん、自覚症状が無くても検査データ異常として副作用が出始めている事もあります。

このため、内服薬を使用している場合には定期的に採血を確認する必要があります。

・量や種類の変更のタイミングを逃す危険性

患者さんが十分だと感じている薬の量と医学的に必要とされる薬の量が異なる事があります。

例えば私の専門分野である喘息では自覚症状が解消されていたとしても呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)が高値の場合や呼吸機能が低下している場合には薬の量を増量する必要があります。

また、慢性的な呼吸器疾患がある患者さんは低酸素や呼吸機能が低下した状況に慣れてしまっているため、自分自身の自覚症状があてにならない事が多々あります。

あてにならない自覚症状をもとにして自分自身で薬を中断・減量してしまうと10年後20年後の呼吸機能が大幅に低下してしまう危険性が高くなるため、医学的根拠に基づく薬剤の調整が必要です。

・治療している疾患以外の病気の発見が遅れる危険性

診察とは問診、視診、聴診、触診などを指します。

医師は診察室に入ってくる歩き方、顔色、しぐさなどもチェックしつつ、何気ない会話を交えながら診療するトレーニングを受けています。

このため、前回よりも(ちょっと足を引きずっているな…)(顔色が悪いな…)(鼻をすする回数が多い…)(鼻声だな…)(少し活舌が悪い…)など普段と異なる症状の出現に早めに気づいて早期に病気を発見することができます。

しかし、薬のみで対面診療をしていないと普段の状況が解らず、病気の発見が遅れてしまう可能性が高くなってしまいます。

 

ドクターショッピングのリスク

前述した

・副作用に気づきにくい危険性

・治療薬の量や種類の変更タイミングを逃す危険性

・病気の発見が遅れる危険性

は短期間に複数の医療機関を次々と変えるドクターショッピングでも起こり得ます。

前医の考えや治療経過を記載した診療情報提供書を持参するセカンドオピニオンとドクターショッピングは全く異なり、情報が少ないと当然診療の質は下がります。

浮気性の人に対する心象が良くないように、ドクターショッピングをする患者さんに対する心象は医師にとって良いものではありません。

なかなか症状が改善せず医療機関を変えざるをえない時には、少なくとも前医の検査データ、処方、経過が解るようにしておくこと、可能であれば診療情報提供書を用意することをお勧めします。

 

薬の変更が必要ない患者さんの診察について

お陰様で最近は当院を受診する患者さんが増えてきており、その分お待たせしてしまう時間が長くなり、予約が入りづらくなる状況がでてきました。

薬だけもらって帰る危険性について前述したものの、安定していて薬の変更が必要ない患者さんが「薬だけもらって早く帰りたい」という気持ちになるのもよくわかります。

また、そういった患者さんを長時間待たせてしまう状況は医師や受付のプレッシャーやストレスにもなっています。

「薬だけもらって早く帰りたい」というニーズに少しでも応えるため、「症状変わりなし、薬変更なし、診療医は院長・副院長どちらでも可」という患者さんに手が空いた医師が適宜対応する「処方変更なし外来」を11月中旬から月曜日午前、火曜日、金曜日に試験運用してみることにしました。

「薬だけもらえれば良いくらい症状が安定しているけど予約枠が空いていなくて予約できない」という状況の時に「処方変更なし外来」をご利用ください。

ただし「処方変更なし外来」を連続利用してしまうと前述した「薬だけもらって帰る危険性」が高くなってしまいます。

このため「処方変更なし外来」は連続利用不可とします。

連続使用が発覚した場合は「予約なし」と同じ扱いで順番待ちして頂きます。

待ち時間対策のために新設する外来枠ですが、連続利用や病状が安定していない患者さんの利用など不適切な利用が多く出てしまうと、この外来枠を閉じてしまうことにつながります。

逆にこの「処方変更なし外来」が上手く回る場合は予約枠を増やしてより快適に当院を利用できるようにできるかもしれません。

適切な「処方変更なし外来」の利用に協力して頂けたら幸いです。

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