メニュー

花粉-食物アレルギー

[2023.07.04]

 我が国のスギ花粉症の有病率は1998年では19.6%でしたが、2008年は29.8%、2019年には42.5%まで増えています。また、近年はスギ花粉症以外の花粉症も増えています。花粉症患者の中には交差反応によって、食べ物にもアレルギーを持ってしまう人がいます。

今月末に依頼原稿の締め切りが控えていることもあり、今回は花粉-食物アレルギー(Pollen food allergy)について記載してみました。

花粉-食物アレルギーとは?

 花粉の中に含まれるアレルゲンタンパクと似た構造をもつ食物を食べた際に唇が腫れたり、喉がイガイガしたり、呼吸が苦しくなってしまうことがあります。このように先行する花粉症によって食物のアレルギーが出るようになったアレルギーのことを花粉-食物アレルギーといいます。

カバノキ科とバラ科

 代表的なものはカバノキ科の花粉症です。シラカバやハンノキなどカバノキ科の花粉症があると、バラ科の果物にアレルギーが出てしまうことがあります。これば、カバノキ科花粉に含まれる感染防御関連タンパク(PR-10)というタンパク質が原因です。PR-10は熱や消化酵素に弱いため、ジャムなど充分加熱した料理では症状が起きにくい事が知られています。バラ科の果物にはどんなものがあるかご存知ですか?バラ科の果物にはリンゴ、モモ、プラム、サクランボ、梨、洋ナシ、イチゴ、梅など色々な果物があります。

カバノキ科とマメ科

 また、ハンノキの花粉症があるとマメ科の食物にもアレルギーが出ることがあります。マメ科の代表選手といえばダイズです。ダイズは枝豆として食べられるだけでなく、豆腐や納豆、醤油、味噌など色々と形を変えて食されます。加熱や発酵が加えられたダイズ食品は比較的安全ですが、豆乳はダイズのアレルゲンタンパクを多く含むため、特に注意が必要です。

ダイズの他にマメ科で思い浮かぶ食品として何があるでしょうか?ピーナッツは「ナッツ」という言葉が入るので、ナッツ類(木の実)と思っていた方がいるかもしれませんが、マメ科のラッカセイ属です。

 

カバノキ科とナッツ類

 ナッツ類の中にもハンノキの花粉-食物アレルギーが出てしまうものがあります。実はアーモンドはバラ科サクラ属の果実の種から作られているのです。このため、ハンノキ花粉のアレルギーがあるとアーモンドのアレルギーが出る事があります。また、ヘーゼルナッツはハンノキと同じカバノキ科ハシバミ属の木の実であるため、同様にアレルギーが出てしまう事があります。

カバノキ科とセリ科

 他にもハンノキはセリ科の野菜やスパイスとも花粉-食物アレルギーを起こすことがあります。前述のダイズやセリ科のセロリなどに含まれるPR-10は他のPR-10と違って比較的熱に安定であることが知られていて、熱を加えた料理でもアレルギー症状が出てしまう事があります。このため、唇が腫れたり、喉がイガイガするといった口腔アレルギー症状だけでなく、呼吸困難や時にはアナフィラキシーという全身症状を起こすことがあるので注意が必要です。

イネ科やキク科とウリ科、バショウ科、セリ科

 カバノキ科花粉以外にも注意が必要な花粉症があります。イネ科やキク科の花粉にはプロフィリンというアレルゲンタンパクが多く含まれます。このアレルゲンタンパクは色々な果物や野菜にも含まれます。このため、イネ科花粉症があるとメロンやスイカなどのウリ科果物にアレルギー症状が出ることがあります。また、キク科花粉症があるとウリ科だけでなく、バショウ科果物であるバナナやセリ科のスパイス(クミン、コリアンダー、フェンネルなど)の花粉-食物アレルギーを起こすことが知られています。

ヒノキ科とナス科、バラ科

 日本で一番多い花粉症はスギ花粉症です。スギはヒノキ科の樹木です。スギ花粉症があるとナス科のトマトにアレルギーがでることが報告されています。この際のアレルゲンタンパクはpolygalacturonaseと言われています。また、ヒノキ科の花粉症があるとバラ科果物などにもアレルギー症状がでると言われています。この際の原因はジベレリン制御タンパク(GRP)です。このアレルゲンタンパクはPR-10やプロフィリンと違って熱や消化酵素で分解されにくいため、アナフィラキシーなどの全身症状を起こしやすい事が知られています。

 

 食べ物でアレルギーが出ている方は一度どのような花粉や食物にアレルギーを持っているのか調べることをおすすめします。院長の伊藤潤に気軽に声をかけてください。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME