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麻疹と風疹

[2024.03.24]

感染力の強い麻疹の患者の発生が国内で相次いで確認されているため、今回は麻疹と風疹について記載しました。

麻疹(meales)とは

麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症の事で、別名を「はしか」といいます。麻疹という呼び方は発疹が麻の実のように見えることから名付けられました。

麻疹ウイルスの感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染であり、人から人への感染力が非常に強い感染症です。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症しますが、一度免疫を持てばずっと免疫が持続する事が知られています。

症状

潜伏期間は10~12日間であり、初期症状として発熱、咳、鼻水が出現します。3~4日熱が続いた後に39℃の高熱と発疹が出現します。

肺炎、中耳炎を合併しやすく患者1000人に1人の割合で脳炎を発症し、先進国でも1000人に1人が死亡する怖い病気です。

また、10万人に1人は感染後亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる中枢性疾患を発症することがあり、SSPEは特に学童期に多いといわれています。

また、麻疹に感染すると細胞性免疫が低下するため、結核などを発症するリスクが高くなります。

対策

麻疹の患者と接触した場合は72時間以内に麻疹の接種をすることで発症を予防できる可能性があります。また、5~6日以内であればγ-グロブリンの注射で発症を予防できる可能性がありますが、安易にとれる治療法ではありません。

対症療法以外に治療法がないため、ワクチンを接種による予防が重要です。

麻疹含有ワクチンを接種することによって約95%の人が免疫を獲得することができます。2回接種することでより高率に免疫を獲得できるため、2006年からは1歳、小学校入学前の2回接種が導入されています。

世代によって接種状況が異なるためご自身の接種状況を確認しておくことをお勧めします。

風疹(Rubella)とは

風疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症の事で、別名を「三日はしか」といいます。麻疹ほどではありませんが、インフルエンザよりも強い感染力があります。

症状

潜伏期間は2~3週間であり、初期症状として咳、鼻水が出現します。発熱と同じような時期から顔や耳後部から発疹が出現します。

関節炎、血小板減少性紫斑病を合併したり(3000~5000人に1人の割合)、急性脳炎を起こすことがあります(4000~6000人に1人の割合)。

妊娠初期に妊婦が感染した場合は高確率で胎児に難聴・白内障・先天性心疾患などを特徴とする先天性風疹症候群が起こるため注意が必要です。

対策

ワクチンによる予防接種が唯一の予防法です。2006年からは1歳、小学校入学前の2回接種が導入されています。

世代によって接種状況が異なるためご自身の接種状況を確認しておくことをお勧めします。

接種後年数の経過とともに免疫が低下してきた人に対しては、追加のワクチン接種をすることで免疫が増強されます。

麻疹風疹(MR)ワクチンについて

MRワクチンは小児の定期予防接種にも用いられています。しかし日本でも麻疹が発生したというニュースがでた影響を受けて、現在MRワクチンが入手困難になり、小児ですら適切な時期に打てない状況になりつつあります。

先日あるテレビ番組で抗体価を確認せずにMRワクチンを接種している医療機関が取り上げられていましたが、MRワクチンが不足している状況下では抗体価が十分あって接種が必要ない人に打つべきではありません。

多くのワクチンは無精卵を利用して作られ、患者数が増えても急に生産することができません。今後の日本を背負っていく子供たちに接種するためのワクチンが不足しないように、必要な人にだけ接種すべきだと私は考えます。

このため、当クリニックでは麻疹抗体価を確認せずに大人にMRワクチンを接種することは行わない方針とししました。

麻疹や風疹の抗体検査について

風疹は自治体によって風疹対策の補助が行われているため、対象者は補助を受けることが出来ます。詳しくは市区町村のホームページをご確認ください。

麻疹や風疹対策の対象外の方は自費で検査を行う事になります。自費の場合はIgG抗体検査実施料(2060円)に判断料(1440円)・手技料・診察代などが加わって約6000円になります。

検査の結果、抗体価が低い方は感染するリスクが高いためワクチンの追加接種をお勧めします。

令和6年4月以降の感染対策について

令和6年度診療報酬改定によって発熱患者に対する診療報酬が大きく変わります。

政府としては「新型コロナウイルスを特別扱いせず、これ以上感染対策にお金をかける必要はない」という意図が表れた診療報酬改定となりました

発熱患者の導線を分けて対応するトリアージ加算が無くなり、新型コロナ検査に関わる診療報酬も下がります。発熱患者を受け入れる外来対応医療機関の指定・公表が令和6331日に終了することも決定しております。このため今後は発熱患者の受け入れ態勢が大きく変わります。

コロナ禍が起きる前と比較して感染対策をしている状況下であっても、新型コロナ、インフルエンザ、溶連菌などの感染症の流行が完全に抑えられている訳ではありません。

更に、これらよりも感染力の強い麻疹まで出現しております。

こういった状況下でコロナ前のように発熱患者と非発熱患者の導線を分けずに同じ待合室に待たせるようになったらどうなるでしょうか?

感染症患者が現在よりも増える可能性が高くなることが想定されます。

現時点でも咳止め、溶連菌検査キット、MRワクチンなどが不足していますが、診療報酬改定後に医療資源不足は更に悪化することが考えられます。

今までに「かかりつけではない」という理由で発熱時に受診を断られた経験をした方もいると思いますが、今後は更にかかりつけ以外の発熱患者をお断りする医療機関が増えると思います。

通院する患者さんとクリニックで勤務するスタッフの安全を担保するために、当クリニックではできる限り発熱患者と非発熱患者の導線を分けて診療する体制を続けていきたいと考えております。

導線を分けることで手間と時間がかかるにも関わらず、4月から感染対策(トリアージ)に対する診療報酬が下げられることが国の方針で決定しておりますので、少しでもスタッフの手間を少なくし、導線を分ける体制を維持するために協力をお願いします。

発熱患者さんはデジスマアプリを用いて予約をし、クレジットカードでキャッシュレス決済できるように準備して頂けると助かります

発熱や咳の症状がなくても引き続きクリニック内のマスク着用にもご協力ください。

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