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長引く咳の治療期間

[2025.11.23]

咳の治療をしていると「この咳はいつ頃治りますか?」「いつまで治療を続ける必要がありますか?」と質問されることがあります。

一言では説明しきれない質問であるため、今回の院長ブログでは咳の治療期間について記載しました。

 

急性咳嗽は早い

一般的に患者さんは2週間前後で咳が長引いていると感じるといわれていますが、医学的には3週未満は急性咳嗽と呼び、咳としてはまだまだ短いという判断をします。

こういった違いから、医師と患者では咳に対する考え方にギャップがあります

3週間未満の急性咳嗽は感染によるものが多く、感染性咳嗽であれば鎮咳薬で比較的早く改善し、治療期間は短くても自然と減弱してきます。

このため先週「長引く咳の診療の質」で記載した①~④のどの医師にかかっても大差ない治療選択になることが多いです。

長引く咳の診療の質 | 中村橋いとう内科クリニック

慢性咳嗽は長い

医学的には3~8週間続く咳を遷延性咳嗽8週間以上続く咳を慢性咳嗽と定義しています。

これらの長引く咳は感染症以外の咳の割合が高く、治療期間も長く続ける必要があります。

報告によって異なりますが、慢性咳嗽の中で1番頻度が高い咳は吸入薬が奏功する喘息/咳喘息です。

2番目は抗ヒスタミン薬が効く咳で、これには後鼻漏、アトピー咳嗽、咽頭アレルギーなどがあります。

次いで胃薬が効く胃食道逆流症による咳、鎮咳薬が効く感染症後咳嗽/肺癌/間質性肺炎など、抗不安薬が効く心因性咳嗽があります。

吸入薬が効く咳の治療期間

吸入薬が奏功する喘息/咳喘息は慢性咳嗽の中で一番多いため、長引く咳にとりあえず吸入薬を処方して対応するというのは一見理にかなっていると思われます。しかし、とりあえず吸入薬といった具合に他の内服薬と一緒に処方されてしまうとその後の疾患鑑別が困難になり、治療期間も不明確になってしまいます。

「咳と痰のガイドライン2025」では「β2刺激薬の反応確認を待てない診療現場では、病歴、FeNO値などから咳喘息が疑わしければ(吸入)治療を開始してよい」という記載となっているため、ちゃんと目を通して咳の診療を行っている医師は基本的に根拠なしに吸入薬を処方しません。

喘息も咳喘息も結果的に吸入薬が効きますが、治療を継続する期間は大きく異なります。

既に呼吸機能が低下している喘息は基本的にずっと治療を継続する必要があります。

一方、呼吸機能の低下がない咳喘息は治療の中止を検討することができますが、将来的に呼吸機能が低下する可能性を極力減らすために結構長い期間治療を継続する必要があります。

前述のガイドラインには「通年性に症状があるか、初発で季節性の有無が不明な患者の場合は2~3ヶ月毎に症状を評価し、無症状かほぼ無症状なら吸入ステロイド以外の長期管理薬を1剤ずつ減らしていき、さらに吸入ステロイドを半減していく。治療開始1~2年後に吸入ステロイドを最低用量(中用量の半分)まで減量できて無症状なら中止を検討して良い。ただし再燃の可能性を説明しておく」と記載されています。

つまり初発で季節性が不明の咳喘息は1~2年間という長期間治療を継続する必要があります

ガイドラインはあくまでも一つの目安であり、実臨床の場では個人個人に合わせて多少アレンジをして応用していますが、少なくとも患者さんが考えているよりも治療期間は長いです。

気管支喘息 (4コマあり) | 中村橋いとう内科クリニック

抗ヒスタミン薬が効く咳の治療期間

抗ヒスタミン薬が効く咳にはアトピー咳嗽、後鼻漏、咽頭アレルギーなどがあります。これらの咳が喘息に移行する割合は低く、将来的に呼吸機能が低下する可能性が低いことから症状改善後にサクッと服薬を中止できます

しかし、最初に内服薬だけでなく吸入薬も同時に使い始めてしまうと咳の原因が解らなくなってしまうため、サクッと止めてよいのかダメなのかも解らなくなってしまいます。私は最初の数日間だけ意図的に使用する薬をずらして使うように指示を工夫をして鑑別につなげています。早く咳を止めるために多くの薬を同時に使い始めることは結果として遠回りになってしまうことがあるので注意が必要です。

アレルギー性鼻炎による後鼻漏やアトピー咳嗽はアレルギー体質が関与しているため、治療終了後4年の経過中に約50%の患者が再燃します。原因となるアレルゲンを追求し環境整備をすることは症状緩和だけでなく再燃の予防につながるため重要です。

アトピー咳嗽 (4コマあり) | 中村橋いとう内科クリニック

後鼻漏 (4コマあり) | 中村橋いとう内科クリニック

鎮咳薬が効く咳の治療期間

感染症後咳嗽として咳が長引きやすいものに百日咳、マイコプラズマ肺炎、COVID-19などがありますが、感染症による咳は時間の経過とともに比較的早く改善します。

一方、間質性肺炎や肺癌の咳は原疾患のコントロール次第であるため、一時的に鎮咳薬が効いたとしても原疾患の進行によって悪化してきます。

咳を主訴に受診する患者さんの中にはこういった厄介な病気が混ざっていることがあるため、当院では50代以上の癌年齢の患者さんや治療に難渋する慢性咳嗽患者さんはレントゲンを確認させて頂くようにしています。

肺癌 (4コマあり) | 中村橋いとう内科クリニック

間質性肺炎 (4コマあり) | 中村橋いとう内科クリニック

医師の説明責任

今回は咳の治療期間について記載しましたが、咳の原因となる背景疾患によって治療期間が大きく異なるため、大切なのは疾患の鑑別です。

医師は、医療法や民法に基づき、患者に対して診療方法や治療リスクについて適切な説明を行う義務があります。

(医療法第1条の4第2項、、民法第656条、645条)

しかし、他院で検査や診察を十分行わずに薬を処方されてしまうと鑑別が難しくなるために十分な説明ができなくなります。

個人的には咳に対して最初に鎮咳薬/去痰薬/抗生剤/抗ヒスタミン薬/吸入薬(特にトリプル製剤)など多剤処方した医師が病態や治療期間の説明責任を負うべきであり、自分の手に負えないと判断した際には処方した根拠や検査結果を診療情報提供書に記載した上で専門の医師に依頼すべきだと考えています。

咳がなかなか改善しない場合は転々と受診先を変えるのではなく、可能な限り最初に処方した医師を再診して改善していない事を伝えてください。

再診してもなかなか改善しない場合には、当院受診を選択肢の一つとして検討して頂けたら幸いです。

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