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食物アレルギー外来の予約料

[2025.08.17]

2025/9/1から当クリニックの食物アレルギー外来の予約枠を制限し、予約料を頂く方針に変更しました。

今回の院長ブログではその背景について記載させて頂きます。

 

成人食物アレルギー診療医療機関情報の公開

成人の食物アレルギー診療を行っている医療機関は少なく、受診先を見つけられないというケースが増えています。

また、小児期から治療を受けていた食物アレルギー患者が成人年齢を迎え、進学や就職による転居に伴い継続的な治療を受けられる医療機関が見つからず、治療や管理が中断されてしまうケースも出てきているようです。

こうした課題に対応するため、2025/7/30から食物アレルギー研究会のHPで「成人食物アレルギー診療医療機関情報」が公開されることになりました。

成人食物アレルギー診療機関情報|食物アレルギー研究会

このリストには日本アレルギー学会の専門医または指導医で、成人の食物アレルギー診療に対応していると申告している医師が掲載されています。

このサイトでは可能な検査(皮膚テスト、IgE抗体検査、食物経口負荷試験など)や可能な診療内容(エピペン処方、原因食物の同定、緊急時対応の指導など)で医療機関を絞って検索できるようになっています。

医師主導の有意義な医療機関情報であることは間違いないです。

一方、主導しているのが医師のみであるため、成人の食物アレルギー診療を行っている医療機関が少ない理由に関する根本的な解決が行われていないままの状況が続いています

 

なぜ成人の食物アレルギー診療を行う医療機関が少ないのか?

患者本人が原因だと気づいていない食物が原因となるケースも少なくないため、食物アレルギー診療は問診に多くの時間を要します

成人の食物アレルギーは小児と違って複雑なケースが多いことから問診時間もその分長くかかります。

日本は保険診療であるため、専門医が丁寧に長い時間診療を行った場合でも非専門医が雑に短い時間で診療を行った場合でも同じ診療報酬となります。

得られた診療報酬からスタッフの賃金や固定費を支払わなくてはならないため、診療を効率化して多くの患者を診ることができる体制を維持しないと経営が成り立たず、1人あたりの診療時間が長くかかる疾患や診療科を回避する傾向が年々強くなっているのが現状です。

また、成人の食物アレルギー診療は奥が深く、純粋な医療知識だけではなく食事に関する雑学を必要としますが、日本では食物アレルギー診療に必要な知識を持つ医師が育ちにくいという背景もあります。

実は海外と違って日本ではアレルギー科を有する大学病院が少なく、アレルギー疾患を総合的に見ることができるトータルアラジストを育てることが可能な大学病院はほとんど存在しません。

そもそも成人の食物アレルギーに関する授業ができる先生が在籍している大学が少なく、ほとんどの大学で成人の食物アレルギー関する授業が行われていないのが日本の現状です。

これらの問題が解決されない限り、成人の食物アレルギーを診療することができる医療機関が増えることはあり得ないのですが、まだ国として有効な対策は取られていません。

小さなクリニックができる対策

保険点数は1958年から1点10円のまま変わっていません。また、物価や消費税が上がっているにも関わらず、初診料は約10年前の2014年と比較して+60円(+2%)しか増えていません。

近年は検査にかかる費用や注射器などの物価が高騰しています。マイナンバーカードリーダーや電子カルテなどデジタル機器の維持に要する負担額も年々増えています。

しかし、保険診療を行っている医療機関は一方的に値上げの知らせを受けるだけで、費用の上昇を価格に転化することができません。

診療効率を上げて患者数を増やすといった対策が不十分であった医療機関は赤字になってしまうため、2024年度における医療機関の倒産は過去20年で最多となっています。

2024年度の調査では医療機関の69%が赤字であり、今のままでは閉院・縮小する医療機関が更に増えることが予想されます。

診療効率の悪い外来を維持するのか中止するのかは各医療機関の経営方針によって選択されます。

当クリニックでは診療効率が悪いために避けられがちな成人食物アレルギー外来を細々と行ってきました。

月に数人程度であれば問題なく継続可能であったのですが、成人食物アレルギー診療医療機関情報の公開などによって当クリニックを受診する食物アレルギー患者の割合が増えており、他の疾患の診療を圧迫するようになりつつあります。

例えば2025/8/19(火)はちょうど100人の患者様が受診してくださったのですが、そのうちの9人が食物アレルギーを主訴とする患者さんであったために余裕のない診療状況となってしまいました。

受診先が見つからない食物アレルギー患者を少しでも多く受け入れるために持続可能な外来のあり方を模索した結果、食物アレルギー外来を分けて作成し、予約料を頂く方針としました。

選定療養費に関わるため、関東厚生局に予約に基づく診察の実施報告書を提出しています。

2025年8月の時点では2回目以降の外来に関しては火曜日・金曜日午後の内科外来で予約料なしで対応するつもりです。

しかし、診療時間を長く要する患者の数が増えたり、今後の診療報酬改定(改悪)次第で予約料を頂く方針に変更せざるを得ないかもしれません。

新規の食物アレルギー相談があり、診療時間が長くかかることが見込まれる場合は食物アレルギー外来の方を利用して頂けると助かります。

大変心苦しいお願いではございますが、2025/9/1以降に当クリニックの食物アレルギー外来を利用する方は予約料1,100円の負担が発生することについて何卒ご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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