2025年のワクチン事情
年度が変わると公費のワクチンについての対応も変わってきます。
2025/4/11に新型コロナワクチンの国からの助成が無くなることがニュースになっていました。
2025年3月に行われたのワクチンの説明会の概要を4月の「いとしんぶん Vol.19」で特集しましたので、今回のブログでもその内容を記載します。
2024年度のワクチン変更点はこちら👇
2024年度のワクチン変更点
★帯状疱疹ワクチン
練馬区では2023年4月から50歳以上の区民の方は初回のみ帯状疱疹ワクチンの半額が助成されることが決まったので、「いとしんぶんVol.1」は帯状疱疹ワクチンについて記載しました。
その後国の方針で帯状疱疹ワクチンを定期接種することが決定されましたが、接種開始年齢が65歳に引き上げられてしまいました。
また、65歳での接種を逃すとその後は70歳、75歳、80歳…といった具合に5歳刻みでしか接種するチャンスがなくなることになりました。
「50歳以上から…」に関しては医学的根拠がありますが、「65歳から…」という区切りに関しては医学的根拠はありません。
急に方針が変わるのは混乱をきたすであろうとの配慮から練馬区では1年間だけ移行期間を設けて2025年度に関しては50歳以上の方は初回のみ帯状疱疹ワクチンの接種費用の半額を助成することになりました。
自動的に接種券が郵送されるのは2025年度に50歳になる区民だけです。以前接種券が郵送されたにも関わらず接種をしていなかった方は自分で接種券を取り寄せる必要があります。
帯状疱疹ワクチンには不活化ワクチンと生ワクチンがあるため、どちらかを選択する必要があります。
迷っている方は「いとしんぶんVol.1」で違いを確認してください。
開業3週目を振り返って
★肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンは3種類あります。このうちニューモバックスのみ初回接種において助成があります。
昨年までは65歳以上となっていましたが、こちらは65歳、あるいは免疫異常などがある60~64歳のみしか助成を受けることができなくなってしまいました。
また、助成の金額も変更になったため接種費用が1,500→4,000円に上がってしまいました。
ニューモバックスは5年で効果が切れてしまいますので、5年ごとに追加接種する必要があります。
他のプレベナーやバクニュバンスは助成がありませんが、効果の持続期間が長いため1回の接種で当面の間は免疫がつくとされています。
カバーする菌種が異なるので2種類の肺炎球菌ワクチンを組み合わせて接種すると、より予防効果が高くなることが報告されています。 これらの違いについては「いとしんぶんVol.13」をごらんください。
肺炎球菌性肺炎
★RSウイルスワクチン
国内で接種できるRSウイルス感染症を予防するワクチンには2種類あります。
アレックスビー®は成人のRSウイルス感染症による重症化予防として使用され、60歳以上の成人のほか、重症化リスクの高い50〜59歳も接種対象となっています。
アブリスボ®は、60歳以上の成人への重症化予防のほか、妊婦に接種を行うことで、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防もできるワクチンです。
詳しくは「いとしんぶんVol.18」をごらんしてください。
RSウイルスワクチンについて
★HPVワクチン
副反応の問題で国が及び腰になり、日本では一時期推奨度が下げられていました。
その後、世界に遅れること十数年を経て有効性を再認識したことから、助成がなくて接種機会を逃していた方に対するキャッチアップ接種を行っていました。
H9年~H19年度生まれの女性を対象にして行われていた公費によるキャッチアップ接種は2024年3月末で終了しました。
しかし、2024年は駆け込みで急に接種患者数が増えたことによってHPVワクチンの供給不足が起きてしまいました。
このため、国は2025年3月31日までに1回以上接種していたキャッチアップ接種対象者は2026年3月31日までに2回目・3回目のワクチンを接種できるように期間を延長しました。
また、12~16歳の女性と男性は助成がありますので。機会を逃さずに接種することをお勧めします。
HPVワクチンはシルガード9、ガーダシル、サーバリックスの3種類あります。
この違いについては「いとしんぶんVol.15」をごらんください。
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて
★麻疹/風疹ワクチン(MRワクチン)
練馬区に住民登録がある19歳以上の方で①妊娠を希望している女性、②妊娠を希望している女性の同居者(同居者とは住民登録上の住所が同一の場合をいいます。)③妊娠している女性の同居者を対象に練馬区では風疹抗体検査および風しん予防接種の費用助成を実施しています。
MRワクチンは2024年に供給不足になってしまったワクチンであり、現在も十分な供給が担保されていない貴重なワクチンです。
上記の①~③の対象となる方は抗体価を確認し、抗体が不足していると判断された方は接種することをお勧めします。
麻疹と風疹
★百日咳ワクチン
2025年3月頃から百日咳が流行しているニュースが流れており、成人の方からも追加接種について問い合わせがくるようになりました。
百日咳ワクチンを含む製剤について2025年の状況は下記です。
4種混合ワクチン:乳児の無料接種用。製造修了になりました。大人は接種できません。
5種混合ワクチン:2024年から適応になった乳児の無料接種用です。大人は接種できません。
3種混合ワクチン:トリビックという自費ワクチンは年長~低学年、11-12歳頃(自費)、大人に接種可能なワクチンです。
Tdapは海外の成人用三種混合ワクチンですが国内では未承認です。
4種混合/5種混合ワクチン、国内で未承認のワクチンは大人に接種した際に何かあっても国の副作用救済制度の適応外になるのでご注意ください。
★2025年度ワクチン助成に関するまとめ
2025年3月に行われたのワクチンの説明会で受けた印象は、悪く言うと「ケチ臭くなった…」という感じです。
実は2025年Natureという医学雑誌に20万人以上を対象にした調査により、帯状疱疹ワクチンの接種が認知症発症リスクを減少させる効果があるという論文が発表されました(PMID:4075543)。
この論文で用いられたのは生ワクチンの方であり、男性よりも女性の方が認知症発症予防効果があったようです。
また、不活化ワクチン(シングリックス)の方は接種後11年目になっても効果が持続していることが追加報告されています(ZOSTER-049試験)。
このようにワクチンの効果が世界的に確認されているにもかかわらず、日本では近年の財政事情悪化から予防接種に関する補助は減少している傾向があります。
ワクチン接種に関して国は医療費を削減する気満々であり、告知しているにも関わらず接種機会を逃した人に対する救済処置はなく、自己責任で自費で打たせる方針になっているようです。
ワクチン非推奨派の方による誤情報に惑わされて接種機会を逃さないようにした方が良いです。
また、世界的には推奨度が高いワクチンであっても国からの助成が出にくくなっております。助成を待っているといつになるかわからないので、必要だと感じたワクチンは自費であっても接種を打つことをお勧めします。